『新建設業を考える』をテーマとして考え続けます。
2009年

2.1 地方自治体の財政難の問題

(1) 財政破綻と財政再建団体

赤字比率(実質収支赤字÷標準財政規模)が道府県で5%,市町村で20%に達した場合に地方債の発行が制限される.自主再建するか国の支援を受け財政再建を図って準用債権するかになる.自主再建の場合,まず規起債の抑制があり,公債費を財源としている事業が行えなくなる.準用再建の場合,財政再建計画を策定し,総務大臣に協議し同意を得ることで地方債の発行制限が解除され国からの財政支援を受けることが出来る.
自主再建した例としては.高知県土佐山村(2005年高知市と合併)がある.
  準用再建した事例としては,福岡県赤池町(2001年度再建完了),準用再建中の北海道夕張市(20年再建期間)がある.
地方自治体の倒産に対して企業のようにつぶしてしまうことは出来ない.また,広大な土地のあるアメリカのようにゴーストタウン化して,住民がすべて他の地域に移住するということは不可能である.夕張市の人口推移を図2-1に記載する.

夕張市人口推移

(2)人件費削減の問題

  地方自治体の長期債務残高は,2004年度末まで約203兆円,2005年度末では,205兆円となり徹底としたコスト削減が求められている.この状況下で地方公務員の人数およびその配置の適正化が求められている.「最小限の職員数で最大の効果を挙げるようにする」行政の需要に対して職員の増減を行いまたは定員管理の変更を行う必要がある.民間委託,事務統廃合・縮小,退職者不完備,新規採用抑制,職員の職種転換を検討し処置する必要がある.職員の数は,1975年で294万,1994年で328万人の最高人数となり,それを境に減少し,2005年では304万人までになっている.
 ただし,地方分権化の推進により権限が委譲されることにより地方自治体の事務が増大することが予想される.そのために行政サービスが低下しないことを前提とした必要な職員数と配置を決定する必要がある.

(3)市町村合併

 明治の大合併により江戸時代から引き継がれた自然集落から1888年(明治21年)71,314の町村数が15,859になった.戦後8000人以上の町村の基準として全体の3分の1に減らした昭和の大合併では,1953年(昭和28年)9,868から1961年(昭和36年)3,472になった.少子高齢化や地方分権の推進より1999年(平成11年)3,229から2006年(平成18年)1,821となった.

市町村数推移

2.2 三位一体改革の問題

1993年(平成5年)6月に衆議院および参議院で「地方分権の推進に関する決議」がなされ,1999年(平成11年)7月地方分権一括法が成立し,2003年(平成15年)6月「三位一体の改革についての意見」が閣議決定された.三位一体改革の背景には,国庫補助負担金,地方交付税,税源委譲を含んで税源の配分が見直される.地方財政秩序の再構築においては,自己決定,自己責任の原理を地方税財政の領域まで推し広げて地方公共団体の財政運営の自由度を高めるとともに地域住民にその受益と負担の関係をわかりやすく改められることが求められる.図3-3のように地方交付税と国庫支出金は,国からの配分となり中央-地方の上下関係を強く位置づけているため三位一体の改革が行われないと地方分権型の行政システムにならない構造となっている.

地方税収

2.3 地方分権による問題
 
 明治時代の旧帝国憲法下では,中央集権体制があり,中央-地方の上下関係にあった.府県知事は,中央政府の任命する官吏であった.議員や長について民主的な色彩が薄く中央政府の統括権が強いものであった.戦時色の強まる頃,中央の統合が強められ国策遂行のための末端機関化していた.戦後の経済成長をささえてきた中央集権型行政システムは,中央省庁による護送船団方式であり,地方や民間の創意を奪った結果となった.
少子高齢化が進行している今,行政システムは,従来の中央集権型の行政システムから地方分権型の行政システムに変革するために,1999年(平成11年),分権一括法が成立した.2001年(平成13年)の報告で分権改革の課題として下記の6つの問題が挙げられている.
① 地方財政秩序の再構築
② 地方公共団体の事務に関する法令による義務付け
③ 地方分権や市町村の合併推進をふまえた新たな地方自治体の仕組みに関する検討
④ 事務事業の委譲
⑤ 制度規制の緩和と住民自治拡充方策
⑥ 「地方自治の本旨」の具体化 
日本の社会システムを見直すところにあるのだが,現在の状態から一挙に改革する事は,不可能に近い.現在の事業を一時中断することは,できない.しかし,現状を分析する事によって最適な方法を選定することができると考えられる.

参考文献〔第2章〕

(2-1) 川又三智彦著 2017年日本システムの終焉  公文社
(2-2) 川﨑政司著 地方自治法基本解説(第2版) 法学書院
(2-3) 総務省 ホームページ 合併,財政の推移 
(2-4) 総務省 財政再建制度について 
  (2-5) 早川進著 地方行政改革における定員管理 行政法務課
  (2-6) 夕張市 ホームぺージ 人口推移
  (2-7) 北海道 ホームページ 住民基本台帳人口