『新建設業を考える』をテーマとして考え続けます。
2009年

平成17年6月26日
いままでは、人口の増加にともない経済が大きく発展してきた時代は、発展途上国のピラミッド型の人口構成であったが、現在の人口構成は、きのこ型になりつつあります。少子高齢化時代に突入しています。これらの高齢化社会のイメージするものは何かというと、人口比率では高齢者が増大し少子化が進行して、孫1人に対してその両親と4人のおじいちゃん、おばあちゃんがまわりにいるかたちを想像します。ただ、死に直面している高齢者は、ほとんどいなく、医療の向上で長寿になり、なおかつ健康的で、決して暗雲立ち込めるような世界でなく明るい未来をイメージしています。
では、インフラ整備はどうかといいますと、経済が大きく発展してきた時代は、建設構造物を利用する人も増大していました。いまからは、建設構造物を利用する人は、高齢者の割合が多くなります。高齢者は、社会的に会社に所属する人は、ほとんどいなくなり税金を納める必要がなく代わりに国家から福祉厚生を受ける側になります。高齢化社会になると経済の低成長から国家の財政が減少します。経済成長が低く抑えられてもインフラ整備が必要になります。そのために下記の内容を今世紀にむけて検討する必要があります。

① 効率のよい建設投資によるインフラ整備
② インフラ整備の施工上の問題
③ インフラ整備の目的の検討
④ インフラ整備の設計の考え
⑤ 地方におけるインフラ整備の考え方

効率のよい建設投資によるインフラ整備とは、労働者数が減少し国家への収入が減少しますので限られた財源が有効に国民に使われる必要があります。また、建設投資において有効で効率のよいインフラ整備事業の投資だけでなく既存の建設構造物をなるべく長く使用する必要があり、そのためにも建設投資は、建設構造物の機能を維持するためにも使われることが不可欠になります。建設には、経済効果や災害復旧機能の拡充するためと効率のよい便益のえる建設投資をする必要があります。
また、建設構造物が永久的でないことを前提においた点検、早期補修することなどの概念をとりいれ建設構造物を将来の使用者に対して長く使用できるようにあらたな維持システムの構築が必要になります。既存の構造物は高度成長期に建設されたものが2010年には50年経過した構造物が一挙に増加しますので早急に対策を行う必要があります。
管理者側だけでなく、点検も車で例えれば自主点検、車検、ガソリンスタンドの点検サービスなど早期不良箇所の発見により快適な車の走行が得られるように使用している側にも責任が発生すると考えれば建設構造物も使用する側で点検に携わる必要があります。
構造物管理者だけでなく本来は使用しているわれわれも点検することを認識する必要があります。
インフラ整備の施工上の問題とは、インフラ整備を建設する関係者の労働者や技術者の数も減少しますので建設の機械化や軽量化、新素材の利用や維持し易い構造技術など技術進歩の必要が迫られます。たとえば、建設資材も運搬に容易な形状にするとか、鉄板の代替材の軽量な新素材を使用することなどの技術が必要になってきます。実際には、労働腕力ともいえるものも低下しております。以前のセメント袋が40㎏入りであったものが今では25㎏入りの荷姿になっており塗料の缶が20㎏入りの缶から18㎏や16㎏の荷姿に代わっています。個人の腕力の低下だけでなくこれからは建設に従事する労働者の数も減少します。このように、一般に使用される建材でも荷姿は軽量化されておりいまから少子化が進むにつれますます軽量化対策を検討する必要があります。仮設資材なども軽量化や環境にやさしい素材の利用、リサイクルできるなど商品開発が限られた資源で有効利用できるような技術開発が必要になります。
建設構造物自身も橋の場合には、架け替えによって使用された鋼材を再利用したり、コンクリートガラが建材の一部として路盤材に再利用したりして有効利用する必要があります。現在の電化製品がリサイクルまで考えた商品として考えているように建設構造物のライフサイクルも考える必要があります。
また、建設技術者の育成が課題になります。少子化が進み若い技術者の総数が減少している中、いかに建設技術者を確保して育成していくかが問題となります。これからの大学のあり方にも共通する問題となります。伊勢神宮の社殿は20年に一度改修しています。これは、宮大工の技術を伝承しているときいています。おなじようにこのインフラ整備するための建設技術は、伝承される必要があります。技術開発だけでなく伝承できるようなシステムつくりが必要になります。
 インフラ整備の目的とは、高齢化社会重視になるとバリヤフリーの構造であるとか、救急病院への道路の確保、過疎地への緊急対策設備(ヘリポート)など高度成長期時代の経済発展を目的にしたことや、文化衛生的な生活を重視するために整備された目的と異なっています。人口増加を前提とした高規格道路から機能型道路にすることや、農業用道路のトンネルというだけで歩道のないトンネルに歩道をつけることなど、目的意識の改善が必要とされます。縦割り行政による予算使用によるためのものなのか不明ですが、インフラ整備の目的意識の柔軟性が必要かとおもわれます。
 インフラ整備の設計の考えは、設計当初からその構造物がリサイクルされてパーツとして再利用することやパーツとして交換すること、また自主点検や定期点検することを前提とした考えなどをとりいれた設計が必要になります。構造的に維持管理しやすい構造にするとか設計の段階で点検、維持を考慮した構造設定をおこなう必要があります。
たとえば、点検や補修に使用する設備や仮設のつり足場の設置がしやすいように釣りフックが構造体に取り付けられていることを建設構造物の設計の段階で検討します。本四架橋の橋梁に点検用のゴンドラ設備があるように設置したような設計の考えが必要となります。
 地方におけるインフラ整備は、各地方によって人口構成もちがってきます。高齢化が著しく進むのは地方よりも東京都のように都市集中型の都市のほうが人口構成からみても一挙に高齢化が進みます。建設構造物が多くありますがそれなりの維持費用が捻出されますが場合によっては都市機能を廃棄することのほうが維持費用の掛からない手段かもしれません。また、地方の台風災害が多くある地域では、バイパス道路の確保や、港湾の整備が必要不可欠となります。地方では、おおがかりな点検や維持の費用も捻出できないこともあります。しかし、国鉄時代に各橋に橋守という職種の方がおられて普段から点検をおこない早期に軽微な(お金のかからない)修理をすることで橋を安全でしかも長く使用してきました。各地方のインフラ整備もこのように物を大切に使うことやむだのない建設投資をするという概念を考慮して独自の整備をおこなっていけばよいと考えます。

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